講演会「農業用水等地域水質環境を考える」のご報告

1.概 要

 (1)日 時:平成15年2月21日(金)13:30〜16:00
 (2)場 所:財団法人 北海道農業近代化技術研究センター 会議室
 (3)主 催:財団法人 北海道農業近代化技術研究センター 

  

2.内 容

「河川の水質環境の現状と課題」
  石川  靖 氏(北海道環境科学研究センター 環境保全部 水質環境科)

「藻類の生息環境と周辺に与える影響」
  高野 敬志 氏(北海道立衛生研究所 健康科学部 飲料水衛生科) 

 石川氏の講演では、河川に関わる環境(公害)問題の変遷を概観した後、北海道における近年の河川環境のうち、旧廃止鉱山による重金属汚染と常呂・網走川の全域調査(エコリバー調査)結果の紹介がありました。鉱山廃水では十分な水質改善が見られない場合があり、エコリバー調査では、中流域で窒素・リン負荷が高まること、森林域では窒素負荷量が抑制される傾向を持つことが紹介されました。
 高野氏の講演では、水道水源の水質悪化に関係する藻類について、弊害を起こす藻類の紹介と、生育に関わる条件、発生を抑制する条件についてのお話がありました。
 参加者からは、北空知周辺の河川水質・藻類発生の現状などについて活発な質疑応答が行われました。
 水質保全は農業にとっても関わりが深く、情報量も増えてきており、関心が高まってきています。今後は情報の受け手も正しい知識を持つことにより、環境保全への取り組みを進めていくことができるものと思われます。
   

写真1.主催者挨拶

写真2.石川氏講演風景

写真3.高野氏講演風景


3.主な質疑応答


 当地の用水路では、藻が砂の中・水路の側面・流速が遅いところに発生している。発生原因は富栄養化に関連するのか。また、対策として水路内面をきれいに保つことが必要かと考えているが、今後どのような対策が有効と考えられるか。
 藻を根絶させるような根本的な対策はないと考えている。
 実際に見たところ、ケイ藻類より緑藻類が多い傾向であった。
  一つの手段として「生物多様性(各種生物同士の競争)」を利用することも考えられるが、基礎データを積み上げて要因を一つ一つつぶしていく必要がある。減らす可能性はあるがゼロにはできないだろう。

 カドミウムの現行の基準(0.01ppm)見直しが検討されており、1/5になるのではないかといわれている。そうなった場合、基準値をオーバーする地点が出てくるか。
 鉱山などの汚濁源が近くにないので、基準値は超えないだろうと考える。

 藻類の発生を抑制する方法として遮光する手段があるが、森林が減少することで上流部の遮光効果が減少し、藻類の発生に影響していることはないか。旭川市の上流域でもアオミドロが発生している事実がある。
 調査事例はないが、たいてい森林域の河川はきれいで流れが速いので森林減少の影響はないと思う。アオミドロの発生要因は、分布を調べれば何かわかるかも知れない。

 緑藻類は水田などで乾燥すると貼り付く状態になりうるか。また、流れる時は形状を保ったままでいられるのか。
 一般的には乾燥すると分解してしまうが、再び水が入ってくると復活する場合もある。水田に貼り付くとすれば、どこかに貼り付く→流れる→貼り付く、というように繰り返して入ってきたものだと思う。

 分解しにくい藻というのはあるか。
 堆積すると分解しにくくなる。

 水域保全においては、栄養塩類の浸入をシャットアウトする場合と捕食動物などの「生物多様性」を利用する場合を比較すると、どちらの効果が高いのか。
 どちらも効果の把握にはかなりの時間を要する。状況を見ながら選択すべきと思う。

 常呂川・網走川全域調査における汚染源は何と思われるか。
 窒素に関しては、市街地の生活排水と、農業生産活動が関係していると思われる。