ほ場均平作業のIT実用化試験のご報告
 
IT実用化試験(RTK-GPSレベラー)
 当財団では、農村工学研究所(つくば市)の主催による「担い手の育成に資するIT等を活用した新しい生産システムの開発」の共同研究に参画しております。
 IT活用の新システムでは、高精度で位置情報を取得できるRTK-GPSの活用が有効です。
今回は、実用化に向け開発中である『RTK-GPSレベラー』の実用化試験と『RTK-GPSレベラー』のシステム概要についてのセミナーを、2007年10月10日に深川市において実施いたしました。
 『RTK-GPSレベラー』は、これまでの『レーザーレベラー』とは異なり、位置情報(緯度・経度・標高)を『RTK-GPS』で取得し、パソコンで作成したマップを用いて整地する基盤高さを設定して自動でレベラーを制御することができます。
 ほ場面の測量、標高マップ、整地標高マップ作成、レベラー制御、整地状況マップの表示によるオペレータ作業の支援が可能です。


【開催概要】
実施日:平成19年10月10日(水)
場所:JAきたそらち深川支所研修センター(深川市開西町1丁目6番1号)
参加人数:95名

@RTK-GPSセミナー:13:00〜14:00
Aほ場試験:14:30〜15:30
1. RTK-GPSの営農利用及び基盤造成利用
 近年、IT技術を活用した農作業の省力化、均平の高精度化のための実用化試験が各地で実施されており、RTK-GPSを用いて、トラクタ、作業機械を制御することで、傾斜面も含めた均平精度向上、農作業の省力化・コスト低減が可能となります。また、ほ場整備の基盤造成では、施工面の高低を自動で制御するシステムとして、レーザーブル、レーザーレベラーが使用され、威力を発揮してきました。しかし、レーザー発光器の設置手間がかかり、高さ情報のみで仕上げ高さの設定はできない、また複数ほ場の同時作業によりレーザー光が錯綜し、多数並行作業ができないといったような課題があります。
 当財団では、これらの課題を解決し、ほ場の均平作業を容易にし、ほ場内の標高データを位置情報として管理できるRTK-GPSレベラーの開発に関わる共同研究を農村工学研究所(つくば市)、スガノ農機株式会社、株式会社ニコン・トリンブルと実施しています。
 共同研究の目的は、基盤整備工事と営農で利用するために、制御システム(ソフトウエア・ハードウエア)の検証、実用化のための課題点とその対応について検証することです。
 実用化段階では、制御機械のイニシャルコスト、通信費用等のランニングコストが課題となり、特にGPSの単一目的の利用では大きな課題となります。
 そのため、将来的には、GPSを共通のツールとした、基盤整備〜営農作業とほ場管理(精密農業との連動も考慮)の体系的な制御・管理システムが必要であると考えています。
 深川での実用化試験は、現段階でのRTK-GPSレベラーの開発状況を深川市周辺地域の生産者をはじめ、利活用が想定される関係機関の皆様方に知っていただき、今後の実用化に向けた課題点等について検討することを目的としたものです。
 また、RTK-GPSセミナーの開催により、RTK-GPSの概要と『RTK-GPSレベラー』のシステム概要について、理解を深めていただくものです。
2. IT実用化試験の内容(RTK-GPSレベラー利用)
 ほ場の均平作業を容易にし、ほ場内の標高データを位置情報として管理できるRTK-GPSレベラーの特徴は、次のとおりです。

●圃場の外周、高低差を作業前に計測。
●圃場高低マップ、切土・盛土、土量計算、面積計算可能。
●レベラーの仕上げ区域・高さを、ほ場内で自由に設定可能。
●リアルタイムで機械の位置・高低差を把握、高能率な均平作業が可能。
(複数台の並行作業が可能)
●3次元位置が高精度(誤差±2cm)に計測でき、最高均平精度は高低差±2cm。
●モニターを見ながら、夜間作業が可能となる。

 深川市ににある、JAきたそらち深川支所研修センターで、『RTK - GPSセミナー』を開催しました。
 講師は、株式会社ニコン・トリンブル 岸恵純氏で、『高精度GPSを利用した農作業への応用技術』についてご講演いただきました。
主な講演内容は、
○GPSの歴史
○GPS利用の基本技術
○高精度RTK-GPSについて
○RTK-GPSレベラーの開発
○GPSの農業利用
でした。
 セミナーの終了後、RTK-GPSレベラーの試験を実施しました。
 前日からの降雨により、ほ場での試験は実施できませんでしたが、JAきたそらち深川支所研修センター前のグランドをほ場に見立てて、トラクタに搭載したGPSにより、地形測量を行いました。
 試験に使用したトラクタには、ノートパソコン、GPS受信機等の機器を搭載しています。
 GPS等の機器を搭載したトラクタでグランド内を走行することにより、容易に地形データを取得することができます。
 下の図は、試験を実施したグランドの標高データをもとに、均平化するための切盛深さ、土量を表示したものです。トラクタでの走行直後に、専用ソフトで解析し、表示することが可能です。
※図をクリックすると、拡大図(PDF-85KB)が表示されます。

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