研究発表等の受賞
令和元年度 北海道農業土木協会表彰事業“奨励賞”を2つの課題で受賞 |
■奨励賞 山田 雅紀 氏・菅野 靖幸 氏・廣澤 征実 氏・中津 敬太 氏・南部雄二 氏 課題名:『十勝管内における平成28年台風災害復旧農地フォローアップの取組概要』 |
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平成28年、十勝管内は複数の台風によって記録的な大雨がもたらされ、河川の氾濫によって農地に甚大な被害が発生した。被災農地の復旧にあたり、土量確保とコスト縮減の観点から河川事業で発生する河道掘削土を活用したが、農家が培ってきた耕作土壌とは性質が異なるため「土づくり」
には時間を必要とする。こうした認識にもとづき、災害復旧農地において早期の生産性回復にかかる調査を実施した。 被災農地の面積は、帯広市・芽室町・清水町で合計279haであった。復旧工事は平成29年2月から開始され、翌年8月に終了した。復旧工法は、土壌流失圃場への河川掘削土客土、土砂等堆積圃場における排土・混層耕である。後者の場合、堆積土の性質によっては混層に注意が必要である。前者の復旧対策は、客入土壌の理化学性を明らかにした上で、作物の生育状況に応じた営農指導や排水改良などフォ口一アップが必要となる。このため、十勝総合振興局は、基盤整備と営農指導の両部門からなる「十勝・復旧農地土づくり支援プロジェクト」を立ち上げ、試験場や市町村、JAなどの関係機関と連携したフォローアップによって生産性の早期回復を目指している。 復旧後の圃場状況や土壌調査結果は、客入圃場ごとに、また同一圃場内でも性質が異なる傾向があり、被災のなかった圃場との生育状況の違いや復旧圃場内の生育ムラが生じる可能性を示唆した。このため、定量的な生育・収量調査に加えて、平成30年からはUAVによる生育状況調査を行っている。 被災した農地は、関係機関の協力や建設事業者の努力によってわずか2年余りで元の「姿」を取り戻したが、「営農復旧」は緒についたばかりである。しかし、園場条件の改善に加え、関係農家に調査結果の提供や提案を積極的に行うことで営農意欲を取り戻し、笑顔が見られるようになったことも、復旧プロジェクトの重要な成果であろう。 本事案は、農業農村整備に関する調査報告として高く評価されることから、農業土木協会賞「奨励賞」にふさわしい業績と認められた。 |
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■奨励賞 平沢 俊 氏・大方 緒憲 氏・佐々木 亮祐 氏・山崎 祐樹 氏 課題名:『集中管理孔の地下かんがい利用における効果的な営農管理について』 |
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地下かんがいの効果的な利用法として、乾田直播の播種後に「ヒタヒタ程度」に水環境を管理することでの苗立ち確保や、小麦・大豆栽培時に地下水深を30cm程度に保つことで干ばつ被害を回避できることが知られている。しかし、一部には「水が上がらない」、「地下水位が均等にならず場所により過湿になる」といった問題が生じている。これに対して、地下水位の均一な上昇を促すための対策として北海道農政部は集中管理孔の「手引き」や「取扱説明書」を提示し、地下かんがいの普及を図っている。これらでは、サブソイラによる心土破砕や補助暗渠の施工による問題解消を紹介しているが、水稲や転作作物に対応した施工時期・施工間隔は農業者の判断に委ねているのが現状である。サブソイラは、本来、圃場排水を促進して春季の圃場管理を容易にするため秋に施工するが、地下かんがいを目途とする施工時期に関しては、試験データが少なく十分な検討はなされていない。また、転作作物に対応する施工間隔は、中央農業試験場の調査によって2m程度が望ましいとされたが、乾田直播の場合の間隔は明らかになっていない。本事案は、水稲乾田直播に対する地下かんがい利用にあたって、均一な地下水位上昇を促すためのサブソイラ施工時期と施工間縞を調査・報告したものである。 空知総合振興局管内の水田圃場での調査により、サブソイラによる心土破砕効果の範囲や施工間隔による水回りへの影響、施工時期による水回りの違いなどを確認した。それらの結果、地下かんがいによる給水時に均一な水位上昇を促すには、春にサブソイラなどによって心土破砕することが効果的であることを明らかにした。また、水稲乾田直播圃場での最適な施工間隔に関しては、5m間陥程度の施工が妥当と提案している。さらに、施工深については「取扱説明書」に示される40cmの重要性をあらためて確認した。 以上の報告内容は、農業農村の整備に関する調査研究として高く評価されることから、農業土木協会賞「奨励賞」にふさわしい業績と認められた。 |
⇒(北海道農業土木協会ホームページ)